Centre Pombidou Le corps desenchante

A.GIACOMETTI, FEMME DEBOUT II 1959-60

むかし、自分が針のように思えてならない時期が続いた。
ほそくほそく、どこまでもほそく伸びきってしまう。
伸びきって、いったいどうなってしまうのかもわからない恐れ。
あるとき、その感覚はまったくなくなって、
その頃から「わたし」が生まれたような気がする。
わたしが生まれて、わたしはどこに行くのか?とわたしに問い始めた気がする。
将来、わたしがどうなっていくのかさっぱりわからない、って時期は誰にもある。


5歳の頃から、道ばたが自分のいちばん居心地のいい場所だった子どもが、
13歳になるということはもう、8年間も道ばたの世界に慣れ親しんで、
その世界ではいっぱしな少年になるということだ。
道ばたで往来するすべての不満と世の不条理を知る。