Photographer

夕刻のパリ・ノートルダム
いつものことだけど観光客でごった返してる。
右側の入り口を入ってすぐの、
黒いイエスの十字架のところで待ち合わせね。
すぐわかるから。
15分前に着いた。
大きな柱のかげにたたずみ、
訪れる人々を観察する。
黒いイエスの十字架の足もとには、
人々が捧げる蝋燭の光光光。
蝋燭を2ユーロで買う人、
光る蝋燭から光をすくい取り、
自分の光として捧げる人。
光る蝋燭の光の写真を撮る人。
光の写真を思う存分撮った後、
はっと目を上げ、
黒いイエスの十字架を仰ぎ見る。
光に引き寄せられ、
エスの十字架を仰ぎ見る。
祈る人。
まるで機械仕掛けの人形のように、
十字架を切りひざまずく人。
ただじっと、手を合わせ、目を閉じて、たたずんでいる人。
光を、平和な眼差しで見つめる人。
一人で、二人で・・・
黒いイエスの十字架を興味深そうに眺める人。
二人で、三人で・・・
カメラ。
この小さな女の人はさっきからずっとここにいる。
その人の後ろから、
その人の眼差しを追う。
カメラの中に目がすっぽりと入ってる。
ひそやかに、空気のように、まるで自分は存在しないかのように、
なにかを追っている女の人。
絶対に日本人だと思う。
声をかける勇気なし。
時間が来て、後ろから友が私の肩に手をかける。
友が話し掛けてくれた。
フランス語話せます?
やっぱり。
彼女はフォトグラファーだった。
ニューヨーク在住。
http://www.misakophoto.com/