さくらのお顔


さくらを見てて思うんだけど、
さくら自体が光ってるわけじゃないんだよ。
さくらはさくららしく咲いているだけ。


光のあたり方で表情がずいぶんちがうよ。
空が晴れて、きら〜って光がやってくると、
人間たちの表情がきらきらと輝いて、さくらを仰ぎ見る。
でも、雲がおおって、くもりになると、急にさくらに陰がかかる。
そうすると、人間はさくらを仰ぐのをやめるのね。


市谷駅前の交番のお巡りさんの頭の上にも、
さくらが咲いてて、
風が吹くと、ひらひらと、彼らの頭の上にさくらの花びらが散る。
にこやかな陽のひかりがさして、
駅に向かう急ぎ足の人たちの頭の上にも、
さくらの花びらが散る、散る、散る。
さくらの枝は手の指を広げ愛をみんなの頭の上に注ぐ。
あ、雪だよ、
女の子がママに言う。
春の雪。
春のさくら。
うふふのさくら。