飼い主のいない羊

まことに、シオンの民、エルサレムに住む者よ もはや泣くことはない。
主はあなたの呼ぶ声に答えて 必ず恵みを与えられる。
主がそれを聞いて、直ちに答えてくださる。
わが主はあなたたちに 災いのパンと苦しみの水を与えられた。
あなたを導かれる方は もはや隠れておられることなく
あなたの目は常に あなたを導かれる方を見る。
あなたの耳は、背後から語られる言葉を聞く。
「これが行くべき道だ、ここを歩け 右に行け、左に行け」と。
主は、あなたが地に蒔く種に雨を与えられる。地の産み出す穀物は豊かに実る。
その日には あなたの家畜は広い牧場で草をはみ地を耕す牛やろばは
ふるいや箕でえり分け 発酵させた飼葉を食べる。
大いなる殺戮の日、塔の倒れるとき そびえ立つすべての山、
高い丘の上に 水路が造られて、水を運ぶ。
主が民の傷を包み 重い打ち傷をいやされる日
月の光は太陽の光になり
太陽の光は七倍になり
七つの日の光となる。
イザヤ書30章19−21、23−26

エスは町や村を残らず回って、会堂で教え、御国の福音を宣べ伝え、ありとあらゆる病気や患いをいやされた。また、群衆が飼い主のいない羊のように弱り果て、打ちひしがれているのを見て、深く憐れまれた。そこで、弟子たちに言われた。
「収穫は多いが、働き手が少ない。だから、収穫のために働き手を送ってくださるように、収穫の主に願いなさい。」
エスは十二人の弟子を呼び寄せ、汚れた霊に対する権能をお授けになった。汚れた霊を追い出し、あらゆる病気や患いをいやすためであった。そして言われた。
「むしろ、イスラエルの家の失われた羊のところへ行きなさい。行って、『天の国は近づいた』と宣べ伝えなさい。病人をいやし、死者を生き返らせ、重い皮膚病を患っている人を清くし、悪霊を追い払いなさい。ただで受けたのだから、ただで与えなさい。」
マタイによる福音書9章35−38、10章1、6−8

飼い主のいない羊と失われた羊。
彼は、この羊たちをじっと見ている。
弱りはて、打ちひしがれて、ぐったりしている羊たちからその眼差しは離れない。
憐れみの視線。おなかから涙がこみあげてくるような、そういう視線。
彼自身がいちばんよく知っているんだと思う。この視線がどこからくるのかを。そしてまた彼自身も、この視線で救われたんだ。
夕日を追っかけて、草原の石っころにつまづいて、転んでひっくり返って、ひざっこぞうをすりむいて泣いてしまったときに、情けないねぇ、かわいそうにと、自分をなぐさめてくれる深い声を聞いたにちがいない。そしてなにより、ほんとうのお父さんが走りよって抱き起こしてくれたにちがいない。すりむいた傷にツバをつけてくれて、痛いのはとんでけって言う声を知ってるにちがいない。
働き手って、だから、働き眼(まなこ)だよね。