はじめのキリスト者


図書館の新刊で見つけた。

原始キリスト教の心理学―初期キリスト教徒の体験と行動

原始キリスト教の心理学―初期キリスト教徒の体験と行動

歴史的宗教心理学という方法論は昨日はるるさんと話してた心性史とも関係するんだね。「当時」の人びとの集合的な体験、行動、心情などを扱うということで「心理学」ってことになるんだけど、なんだろ、文化人類学、考古学、聖書学を駆使して人間像を表面的なものだけじゃなく、人びとの生きた内面から掘り起こすという感じになるのかな。
たとえば「魂とからだ」って言ったってはじめのキリスト者が現代の我々と同じような感じ方で生きてたかどうかって、「たぶん大きく違っただろうな」ってぐらいのことは予想できる。でも、「どんなふうに違うのか」っていうのはやっぱりこういう研究に聞かないと分からない。
800ページ以上にのぼる大著、読みごたえがありそうだ!

http://www.shinkyo-pb.com/bibliology/post-988.php
原始キリスト教の心理学
初期キリスト教徒の体験と行動

著者:ゲルト・タイセン / 訳者:大貫隆
定価:9,975円

【目次より】
はじめに
序 論  原始キリスト教という宗教の心理学――その問題設定と方法論――
  I. 原始キリスト教の心理学の方法論的限界と可能性
     歴史的宗教心理学はどのように作業するか
  II. 原始キリスト教の心理学の豊富な対象
     歴史的宗教心理学は何を研究するのか
  III. 宗教心理学の理論を求めて

I 魂とからだ
  古代における内的人間の発明と原始キリスト教におけるその革新
 a. 古代における内的人間の発明
   i. 外部霊魂の内面化
   ii. 内部霊魂の一点集中化
   iii. イスラエルにおける人間像の展開
   iv. ギリシアにおける人間像の展開
   v. 穏健宗教的な経験と極限宗教的な経験
 b. 原始キリスト教における内的人間の革新
   i. マタイ福音書における自己力動性:倫理的人間像
   ii. ヨハネ福音書における他者力動性:救済論的人間像
   iii. パウロにおける変容力動性:変容力動的人間像
    1)パウロにおける全体論的人間像
    2)パウロにおける二元論的人間像
   iv. 人間像における無意識
       深層力動の二つの型:罪責の抑圧と自己
    1)パウロにおける深層力動:肉と霊の超越性
    1)『ヘルマスの牧者』における深層力動:抑圧された罪
    2)グノーシスにおける深層力動:忘却された真の自己

II 経験と体験
   宗教としての原始キリスト教における霊性の次元
 a. 原始キリスト教における宗教的経験の総括概念としての「プネウマ」
 b. 宗教的知覚:透視と幻視
   i. 透明になった現実性の宗教的知覚
   ii. 突破経験としての夢見と幻視
 c. 宗教的情動:恐れと喜び
   i. 穏健宗教的な恐れと極限宗教的な恐れ
   ii. 穏健宗教的な喜びと極限宗教的な喜び
 d. 宗教的発語:祈りと異言
   i. 日常言語による祈りと発語
   ii. 極限宗教的な発語:異言
 e. 宗教的変化:回心と改宗
   i. 回心と悔い改め:規範をめぐる決断
   ii. 改宗:実存の方向転換
    1)パウロの神イメージにおける両価性の葛藤
    2)論敵とキリストとに対する関係における葛藤の活性化
    3)キリストとの関係による神との葛藤の意識化
    4)体験と行動の新しい範型による人間の変革
 f. 宗教的結合:ことば信仰と奇跡信仰
   i. 信頼としての信仰:ことばへの信仰
   ii. 力の獲得としての信仰:奇跡信仰

III 神話と知恵
   宗教としての原始キリスト教における認識の次元
 序論:神話と知恵についての理論的考察
 a. 宗教認知論的解釈の主導概念としての「知恵」と「ケリュグマ」
 b. 悪の因果帰属と神義論のアポリア
   救済論の三角形「神・人間・世界」の釣り合い
   i. 初期ユダヤ教文書における悪の因果帰属
   ii. イエスパウロにおける悪の因果帰属
   iii. 後期新約諸文書の神学における悪の因果帰属
 c. 宗教的アポリアに対する解釈としての神理解
   i. 根本公理としての神信仰:倫理的一神教
   ii. 「神の国」の神話:終末論的一神教
 d. 宗教的アポリアに対する解釈としての世界理解
   i. 知恵の公理としての創造信仰:故郷としての世界
   ii. サタン神話:敵対的な世界
 e. 宗教的アポリアに対する解釈としての人間理解
   i. 罪の赦しの信仰という公理:回心する人間
   ii. 贖罪神話:救われた人間
 f. 宗教的アポリアに対する解答としてのキリスト理解
   i. 反直観的な役割提供としてのキリスト論
 イエスの謙譲に対する解釈:イエスの死の意味づけ
   ii. 穏健宗教的な役割提供を行う副次的登場人物

IV 儀礼と共同体
   宗教としての原始キリスト教における社会的次元
 序論:儀礼と共同体についての理論的考察
 a. キリスト教徒の共同性を主導する概念としての「教会」
 b. 共同体への加入:回心と再生のための洗礼
   i. 心理療法的な回心儀礼としての洗礼
   ii. 変容的な改宗儀礼としての洗礼
 c. 共同体における生:聖なる食事と礼典としての聖餐式
   i. 禁忌違反を伴う礼典としての聖餐式
   ii. 禁忌違反を伴わない聖なる食事としての聖餐式
 d. 共同体における支配:カリスマと職制
   i. 儀礼によるカリスマの事象化
   ii. 教えによるカリスマの事象化
 e. 共同体における生:教会とセクト
   i. 原始キリスト教における教会的な構成
   ii. 原始キリスト教におけるセクト的なグループ

V エートスと実践
  宗教としての原始キリスト教における実践的次元
 序論:エートスの意義についての理論的考察
  a. 聖書のエートスの主導概念としての「愛」
   i. 厳格倫理の立場からの愛の拡張
   ii. 穏健倫理の立場からの愛の限定
 b. 攻撃行動とその克服:原始キリスト教における衝動の制御
   i. エートスにおける攻撃行動の緩和
   ii. ミュートスにおける攻撃性の増進
 c. 性と禁欲:原始キリスト教における衝動の制御
   i. 穏健な性エートスとしての結婚
   ii. 極限的な性エートスとしての禁欲
 d. 律法と勧告:原始キリスト教における規範による方向づけ
   i. 救いの道としての律法:律法の成就
   ii. 禍としての律法:律法の問題性
 e. 良心とさばき:原始キリスト教における規範による方向づけ
   i. 人間の自己判定としての良心
   ii. 神の判決としてのさばき

VI 神秘主義グノーシス
   宗教としての原始キリスト教グノーシスにおいて遂げた変容
 序論:宗教性の二つの基本型およびグノーシスの成立をめぐる歴史的条件についての理論的考察
 a. 経験と体験
 b. 神話と教え
 c. 儀礼と共同体
 d. エートスと実践

VII まとめと結びの考察
 a. 魂とからだ:古代における内的人間の発明と原始キリスト教におけるその革新
 b. 経験と体験:宗教としての原始キリスト教における霊性の次元
 c. 神話と知恵:宗教としての原始キリスト教における認識の次元
 d. 儀礼と共同体:宗教としての原始キリスト教の社会的次元
 e. エートスと実践:宗教としての原始キリスト教における実践的次元

  文 献 表
  聖書箇所索引
  訳者あとがき