恵みをいただく

6世紀イコン。マリアとヨゼフの真ん中に、イエスが飼い葉おけに寝かされている。この飼い葉おけはある意味では、イエスの死の時の棺のようなイメージもあって、かなり多くの聖画で、真四角のおけに寝かされているというところが描かれている。たぶん、そのあたりは、いろいろと説があるんだと思う。
映画『マリア』でも、幼子イエスが寝かされていた飼い葉おけは―(そこだけは)―象徴的な映像に仕立ててあった。ヨゼフに夢でお告げがあり、エジプトに逃げるという晩、その晩はまさにヘロデ王の兵隊たちが2歳以下の子どもたちを追いかけていた晩だったんだ。馬小屋をも探す兵士の照らす灯りに、空の飼い葉おけがうっすらと浮かび上がった。それはまるで、空の墓のようなものでもあった。あの復活の日の、空の墓。

ヨゼフには理解できない、妻マリアに起こる出来事に頭を抱えて悩んでいる。

上の絵はこの右の絵の一部。真ん中にイエス・キリストの十字架が描かれ、その下に、誕生と成長の場面、そして、その上に、イエスの死と復活の後、マリアと弟子たちに起こった聖霊降臨の場面が描かれている。すべての出来事の中心には「十字架」があるということなのだろう。
このイコンは6世紀のものだから、キリスト教にも迫害が去り、平和な時代をむかえ、十字架が描ける時代だということだ。たぶん、自分たちが実際に迫害を受け、窮地にさらされているときには、とてもじゃないけど悲惨すぎて、十字架を描くことはできなかったに違いない。
エスの生涯の全体を見なければ、イエスの誕生もわからないのかもしれない。
小さな希望がいったいどこにあるのか?と嘆きながら十字架を仰ぐ。
それから、イエスの生の「始まり」とわたしの生の「今」を黙想する。
メメントモリ・・・