海のながめ 5

海を経験するということ。
こんな海のながめを毎日仰ぐことができたら。

次々とあらゆるところから人がやって来て、
石を積み上げる。
一つ、もう一つ、なにかしら高いものを建て上げる。
こういう人間の本能は、いつからなのだろうか。
想像だけでも楽しい。

それはとても楽しいことだし、スリリングなんだよね。
もしも積み上げた石が落ちてきたら、
ドキっとするから。
落ちないように、でも落ちるリスクを常に味わいながら、
そして、この積み上げた石がいつまで積み上がったままでいるかを案じながら、
石を手にとり、また一つ、積み上げた石の上に置く。
そして、一瞬の落ちない空気を手のひらに抱きしめる。
そして、自分が今しがた積み上げた石たちを誇らしげに眺める。

ありとあらゆる空間を積み上げた石たちが覆う。
次々とあらゆるところから人がやって来て、
こんな経験をする。
海は、
海を経験してもらいたいと、
そのながめをじっと見つめている。